図書館にて


 仕事をしようと思って、会社近くの図書館にいた。

 仕事ができる図書館がある。ちょっと広めの図書館であれば、そうしたスペースが用意されていて、かなり快適に仕事ができたりする。ただ、そうは言っても、その時の気の持ちようで、モチベーションはかなり違ったりする。

 午前10時半頃に図書館に入り、中のカフェでコーヒーを飲みながら、翌日の会議の資料を作る… そんな目的でその日はやって来た。カフェには当方一人だけで、仕事の方もそれなりにはかどっていた。そこへ二人組の少女たちが入って来る。中学生ぐらいだろうか? そう言えば夏休みだなと思う。

 彼女たちは、よりによってと言うと自分勝手だが、いくつもある中からボクの横のテーブルを自分たちの勉強場所にした。どのテーブルを選ぶかは、彼女たちの自由であり文句は言えない。その理由も明白で、要するに店の隅っこにしようというボクと同じ考えに基づいていたのは分かっている。

 しかし、それからのボクのペースは一気に狂い始めた。スマホの受信音が鳴る。それもほとんど耳慣れない奇妙な音だ。慌てて止めようとしているが、こっちが考えている以下の怠慢な対応でなかなか音は止まらない。その状況にこちらのサイクルのどこかが支障をきたす。

 さらに彼女たちがひそひそ話を始める。多分、さっきの受信音についてだろうと思う。少しだけ話すと、決まってクスクス笑う。それが背後から聞こえてくるから、こちらとしては状況的によくない。

 セルフサービスの水を汲みに行こうと立ち上がりながら、こういう場合は“汲みに行く”という表現が正しいのかと余計なことまで考えている。山ではないのだから。

 立ち上がったついでに彼女たちを見る。二人ともテーブルの上にいろいろと広げて、とにかく一応勉強はしている気配だ。夏休みの宿題なんだろうか?

 少し時間は早いが、ボクはそのままカウンターまで行って、昼のカレーを注文した。量的にも質的にも自分として満足できないことを推察しつつ、深い考えもないままエビフライをトッピングする。そのまま自分の席まで戻ると、店員がしばらくして届けてくれた。

 彼女たちの気配を背中に感じながら、やや急ぎ気味にカレーを食べる。当方にとっては異様に細長く感じられるエビフライが食べにくい。尻尾を手に持って、そのままガブリといきたいところだが、背後の気配がそうさせてくれない。落ち着かないままカレーを腹の中に流し込んだ。

 それからまた水を汲み?に行き、荷物(パソコンなど)を片付けた。仕事は途中である。しかも、それなりに調子に乗っていた。このまま図書館を出てしまうのも勿体ない。カフェを出ると、館内に入り階段を上って二階フロアに向かった。

 本棚の奥、カウンター式に横に並んだテーブルとイス、目の前はガラスの衝立、その先はなく、見下ろすと一階のフロアが見え、そこには赤ちゃんと若い母親たちが遊ぶ。そんな場所に腰を据えた。

 視線の先には外の風景(芝の広場と住宅)も見えていたりする。椅子の座り心地も悪くない。ここで続きをやることに決めた。

 図書館はボクにとって二つの顔を持つ。ひとつは本に囲まれて、そこから一冊、読みたいなというか、読んでみようかなという本を取り出して、とりあえず行き着くところまで読んでみようとする場所。もうひとつはこうして仕事やモノ書きなどのために使わせていただく場所だ。もちろん本を借りる場所でもある。

 前にも書いたことがあるが、ボクの場合、図書館の本の借り方はかなり雑である。とりあえず借りていき、面白くなかったら(なくなったら)即座に返すというやり方が多い。当然、借り出す前にチラリと読んだりするのだが、その時には面白そうだと感じながら、外で読み直すともう一つだったというのが多かったりする。

 その原因は、図書館における本というものの存在の仕方にあると思っている。多くの本があるから、手当たり次第に何でも読むことができるという甘え?が生まれるのである。ちなみに借りた本のうち完読したのはほんの一部しかない。

 これは非常によくないことだと思うが、図書館はある意味そういうことを許すことで、存在価値を維持していける施設なのだとも思う。逆に面白いと思った本は、当日か翌日にでも返しに行き、その足で本屋へ向かったり、通販サイトを開いたりするのである。

 実用性という視点ではなく、図書館そのものというか、その雰囲気で好きだなと感じている図書館は、かなり遠いところにあったりする。だから頻繫には行けないが、その図書館などは外から見ていたり、中でただぼんやりしているだけでもいい。

 とにかく図書館にはさまざまな顔があり、特有の空気があり、それらを自分の感覚に合わせていくと、ひたすら快適な場所になるのである。

 そういうわけで、何か大事なことを書き忘れたままになっているという心残りがあるが、まず自分としては仕事を仕上げなければならない…という状況にあるのであった。


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