笑顔について


 最近、ちょっと笑顔をつくることに慣れてきたような気がしている。

 家族で旅行したり、ちょっとした行事があったりすると写真を見せつけられるので、これまでのように(?)無粋な表情ではややまずいなと、(今更のように)反省するようになったのだ。

 笑顔は、そう簡単につくれるものではない。

 二度三度と、口元を横に引っ張ったりしながら(もちろん手などは使わない)、少し練習し、いよいよ本番というところで、思い切り笑顔ですという顔をつくるのである。

 しかし、実際に上がった写真を見ても、それほど笑っていない自分がいたりする時もある。それどころか、ほとんど笑っていないだろうと思われる場合もあったりして面倒なのだ。

 若い頃の写真にはよく笑っているのがあるが、年齢とともに笑顔が減ってきたのだろう。

 笑い自体は大好きだし、本当はいつも笑っていたい……

 

 笑顔で思い出すのは、小学校、中学校と同じだった某クンのことだ。

 某クンは、いつも笑顔だった。少なくとも、いつも顔は笑っているように見えた。

 笑顔と特に関係はないが、某クンは足も速かった。

 笑いながら走っていたかどうかは記憶にないが、とにかく回転の速いピッチで運動場を駆け回っていた。

 そして、いつも笑っているように見えたから、某クンを嫌いになる者はいなかった。

 その某クンが本当に笑うと、その笑顔はますます濃い笑顔になる。

 そうでないときの顔が本当は笑顔でなかったのかもしれないと不安にもなる。

 実際に、いつもの笑顔が少し薄れただけで、某クンはとても真剣そうに見えた。時には、深刻そうにも見え、ますます心配になっていくのである。

 しかし、元気がなくなったのかなと思わせたその直後に、また平常通り(?)の笑顔に戻ると、また激しく嬉しい気分になった。

 つまり、某クンの笑顔はボクにとってとても大切な存在だったということだ。

 もう何十年も会っていないが、今でも某クンは笑顔でいるのだろうか。

 

 ところで、高校生の頃の古い話だが、まさしくバレンタインデーの夕方、街(片町の旧うつのみや前あたり)で背中に何かを感じた。

 振り返ると、突然「これを受け取ってください」と、その日の定番的プレゼントであるところの、そのモノが入っているであろうと予測される美しい箱が差し出され、恥ずかしそうにその女子(当然だが、高校生)が下を向いていた。

 それから、急に真剣な顔でボクを見て…、その後どうなったかは忘れたが、ひとつだけはっきりと覚えていることがある。

 自分が笑いかけようとして笑えなかったことである。すると、その女子(たぶん年下の高校生)が、こう言った。

 「笑っているより、真剣な顔しているのがいいです……」と。

 そして、彼女はそのまま軽快に駆け出し、歩道の雑踏の中に消えていったのだ。

 と、誰かが昔の話をしていたのを思い出した。

 なぜか、冷汗が出てきたので終わりにする………

 

 

 


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