創作/ホワイトデー


Why today?

なぜ、今日、私にクッキーをくれるの? 

クラスメイトのシンキチからクッキーを渡されようとした時、

ロスからの留学生ナンシーが戸惑ったような顔で尋ねた。

この間のお返しだよ。シンキチは答えた。

この間って? 

一ヶ月前のチョコレートのお返しさ。

ナンシーは、淋しい気持ちになった。

一ヶ月も過ぎているのに…と思った。

お返しなんか要らない・・・

あのときすぐに、私の気持ちに答えてほしかった・・・・・・

ナンシーは、3日後にロスに帰ることになっていた。

一年間の留学。シンキチと出会って、

付き合い始めて10ヶ月が過ぎていた。

そして、もうすぐ別れが。

ずっと、あなたの言葉を待っていた。

本当の気持ちが知りたかった・・・・・・

そう言うと、ナンシーの目から涙があふれた。

シンキチは驚いた。

ナンシー。ごめん。ナンシー。ごめんよ……。

その日は、3月14日だった。

アメリカ育ちのナンシーにとって、

一ヶ月前にチョコレートを贈ったことも、

日本の習慣を知り、バレンタインデーでの初めての経験だった。

その上に、一ヶ月後のクッキーのことなど知るすべもない。

シンキチもアメリカ人であるナンシーが、

その意味を知らないはずがないと思っていた。

アメリカには…というよりも、

日本以外にはこうした気持ちの表現がないことを

二人はその時初めて知った。


この日米の若い男女が交わした言葉が、

いつの間にか日本の菓子業界の関係者に広がった。

なぜ、今日…? Why Today…? 

それが後に、“ White Day ”になった。

まだ、3月14日にはっきりとした名も付いていなかった頃の話だ……

二人はもちろんその後結ばれ、今も日本で幸せに暮らしているとか。

[N居雑記ノート~1998.3.13の日付メモに加筆]~時代考証はほとんど深くはない。


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