嵐再来と輪島漆器と、ゴミ箱の蓋


12月のはじめに、また冬到来の大嵐が来た。前回の嵐の日も能登方面、旧富来町に向かっていたが、今回もまた能登方面で、今回はさらに奥の輪島まで足を運んでいた。

ただちょっと違っていたのは、前回が朝から大嵐状態だったの対して、今回は昼過ぎから突然大嵐になったことで、その天候の豹変(ひょうへん)ぶりにはかなりハゲしく驚いたりした。

もう少し詳しく説明すると、ボクとボクの会社が誇る優秀なインテリア・デザイナー・K野K太とは、午前中の10時過ぎに会社(石川県野々市町)を出て、12時少し前に輪島の手前の穴水町に到着。ボクにとってはいつもの某そば屋さんに寄って、いなりそばを珍しくご飯抜きで食べ、13時の約束になっている、輪島市の某漆器工房へと向かった。ちなみにK野K太は、月見そばなどといった渋いものを食べた。ついでに書くと、このそば屋さんはガッツリ食べたいと思う時でも、それなりにお手頃な値段で食べさせてくれるのでいい。いなりが好きなボクとしては、以前はよく、“いなりうどん(そば)”に“いなり丼”という、正統派いなりづくしのお昼をいただいたりした。

道中、ひたすら荒れますと告げていた天気予報に反して、空はほとんど完璧に近い状態で晴れていた。時折、二人して「天気は本当に崩れるのか?」について語り合い、そのたびに二人して「もしそうだとしたら、それは信じられぬことだ」と意見が一致した。

しかし、信じられぬことが実際に起こった。輪島の目的地である某漆器工房に着き、社長さんと立ち話を始めた途端、入口のガラス戸がガタガタと音をたてて揺れた。ガタガタと“ガタ”の二回繰り返しに止めてはいるが、実際は“ガタ”が十回以上速いスピードで繰り返されたほどの凄さだった。一応驚きながら、思わず振り返ってしまうという平均的リアクションが自然に出た。

横殴りの雨とはこういうのを言うのだと納得しつつ、横殴り的なフック攻撃ばかりではなく、時折アッパー気味に吹き上がるような雨風パンチもあることに気付く。このあたりは、K野K太郎という学習院大学で八年もボクシングをやってきて、その割には勝率2割ほど(そのうちの半分は相手が試合に遅刻してきて不戦勝だったらしい)という希少なキャリアを誇る子分もいることから、ボクシング風の表現が閃(ひらめ)く。

一旦崩れた天候は、ひたすら崩れる一方となった。奥で打ち合わせなどをしていながらも、時折外からのハゲしい風音に耳がいく。帰りが思いやられる。特に能登有料道路における海岸線走行では、風でハンドルを取られながらの運転となり、突風などが吹けば極めて危険な状態になる。

しかし、そんなことをしばし忘れさせてくれるかのように、美味しいコーヒーが出てきた。しかも美しい輪島塗の器に入り、口元の感触もいい。側面の筋状の立体模様もよかったりした。適度な手持ち感だ。今はまだこのお店の名前を明かせないが、そのうちに出せるようになると、大いに宣伝させていただく。いや、それがこれからの仕事なのだ。

 もうひとつ紹介すると、今年のAPECでも使われたという、輪島塗の円形ボックス型スピーカーなども、このお店のオリジナルだ。かなり前に考案されたものだが、すでにいくつか売れているらしい。注文を受けてからの製作であり、その期間もかなり長いので、高価であることは事実だが、しかし、コダワリ派のそれなりに潤っている人たちには、いい置物型スピーカーとして受け入れられている。

風はずっと強いままだった。家に戻っても、クルマのドアが風の方向と逆な位置にあっただけで簡単には降りられない。全国で風の被害が起きていることをニュースでもやっていたが、実を言うと、我が家でも一つの被害が発生していた。

それはゴミ袋を入れておくためのポリバケツの蓋(ふた)が、風によって飛んで行ったという、極めてよくある型の平均的な出来事だった。幸いにも、蓋は隣地との境界にある低いブロック塀にあたり、それに平行してそのまま我が家の右側面後方へと行ったあたりで静かに留まっていた。移動距離は約20メートル。蓋自身も、飛ばされたときは、さぞかしびっくりしたことだろう。しかし、今はその恐怖から解放され、安堵の様子が窺(うかが)えた。

その日はちょうどゴミの日だった。ゴミ出し当番のボクとしては、蓋の閉まり具合が気になるところだったが、よく考えてみると、ゴミ収集係の人がゴミ袋を取り出した後、しっかりと蓋を閉めていかなかったのが原因かも知れないと推察した。だとすれば、これは大きな問題であり、もしそれが原因で蓋がなくなったとした場合、その責任をゴミ収集会社がとってくれるのかと考えた。蓋を弁償してくれるか、いや蓋だけ売っているなんてあり得ないから、ゴミ箱そのものを弁償してもらわなければならない。その際は、今は色褪せた赤だが、次は青にするかなとか、思いはさらに膨らんだ。『お笑い笑百科』で上沼さんたち相談員に聞いてみるのも面白い、などとも考えた。

 しかし、蓋が飛んだ原因は自分の考え違いであった。翌日も風は強く、朝表へと出てみると、やはり蓋はなかったのだ。前夜しっかりと閉めておいたはずの蓋がやはり同じ方向へと飛んでいた。しかも、その移動距離は約25メートル。前日の記録を5メートルも更新していた。

さらにおまけがあるのだが、後日またしても蓋は飛んでいた。今度は全く逆方向で、隣地の駐車場のド真ん中に、蓋は蓋らしい姿勢で横たわっていた。これでカンペキに蓋自身か、ボク自身かの自己責任問題であることが証明されたのだ。

それにしても、そもそもなぜゴミ袋を入れるためのポリバケツが必要なのかについてだが、これにはカラスたちの食料事情が大きく関係している。今に始まった話ではないが、家庭から出るゴミの中の食料を餌にするカラスたちが圧倒的に増えてきている。

我が家周辺でも、大概ゴミの日の朝になると、必ず最低一軒は無残な状況になっていた。憎きカラスたちではあったが、一旦袋を破られると、後はあっと言う間に中身が放り出され、路上へとゴミが氾濫していく。それを防ぐためには、まず破れやすい袋自体を表に晒さないということが先決だった。一時は漂白剤のようなものを袋にまいておくと、カラスも近寄らないということで、功を奏していたが、結局なんだかんだ言っても、カラスたちはそれらから逃れる方法を知っていたのだ。

だから、我が家では余っていたポリバケツを使うことにした。始めのうちは強風のことなど考えたことはなかったし、それによって蓋が飛んでいくということなど思いもつかなかったと言っていい。しかし、北陸の冬は、冬の風はそんなに生易しいものではなかったのだった。

今、我が家では、強風にも耐え抜く強靭な蓋のあり方、もしくは閉め方について鋭意検討し試験中だ。もちろん風が吹いてみないと分からないのだが、風にも負けず、雨にも負けない、たくましい蓋について、よい提案があれば教えていただきたい・・・・


「嵐再来と輪島漆器と、ゴミ箱の蓋」への1件のフィードバック

  1. ヒッコリーの水野さんから、
    よいアイデアを聞かされた。
    蓋など使わない方法だ。
    なるほどと思った。
    水野さんもどこかで見たらしい。
    ただ、ゴミ収集の人たちには
    ちょっと面倒かな…
    ゴミ箱本体を逆さまにして、
    ゴミ袋に蓋をするというやり方だ。

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