どうでもいいようで、よくなかった話
今年の春、金沢武蔵にある「Sタバ」とかいう茶店での出来事…。
店内は混んでいて、辛うじて確保したテーブルに、めずらしく娘といた…。
若い夫婦が赤ん坊をベビーカーに乗せて入って来る。ベビーカーをカウンター前に止めて、メニューか何かを見ていた。
突然赤ん坊がけたたましく泣いた。母親が赤ん坊に話しかける。だが、話しかけるだけ。赤ん坊は泣きやまない。その時間がちょっと長く感じられ、正直不愉快にもなった頃だ…。
「私は、本が読みたくてここへ来てるのよ」と、近くにいた老婦人が言った。細い銀縁の眼鏡をかけた、白髪の小柄なおばあさんだった。
言い方はまったく激しくはなく、むしろやさしかった。が、その言葉で店内はしーんと静まり返り、ボクと娘も顔を見合わせていた。
若い夫婦は、何か悪いことでもした? というような顔をしながら、混んでいたこともあってか、そのうち店を出て行った…。
そのことがあってから、なぜかそういうシーンに敏感になった。
たとえばMスドとか、Sタバのような店では時折そんなシーンに遭遇した。オトッつァんたちやオッカさんたちが話している時などは、まあまあ許せるが、ちょっと仕事や勉強などをしている人たちには堪ったもんじゃない。
ボクも原稿書きに時折使わせてもらっている。
先日見たシーンも、見るにも聞くにも耐えがたいものだった。
五人で入ってきた、いかにも若きスタイリッシュな母親たち。それぞれが一人ずつ小さな子供を連れている。ほとんどがようやく歩き始めたばかりといった、普通に言えば可愛くてたまらない子供たちだ。
しかし、五人も集まれば、まず母親たちが静でない。はっきり言って、うるさい。さらにそんな母親たちが子供たちをまったく見てないから、子供たちも解放的になり、うろうろと、いや、よちよちと店内を歩き回る。
歩いているだけならいいが、喚いたり、叫んだりもする。機嫌が悪くなると、当然泣いたりもして、店内はさらに騒々しくなる。
近くまで来れば、ちょっと愛想笑いもしなければならないし、気を使う。
しかし、母親たちはほとんど極限状態にならないと腰を上げず、ひどいのになると自分の席から、
「・・ちゃん、こっちおいで」とか、「静かにしてなきゃ、ダメでしょ」などと言うだけだ。
パソコンに向かってレポートでも書いていたのだろう、女子大生風の女の子は母親たちの方を一回睨んでから、イヤホーンを耳に当てた。
外国語の辞書か何かを広げていた女性も、それをバタンと閉じてフーッと息を吐く。
ここで、「おいコラッ、責任者出てこい!」などと、もう三十年も前に他界した、ぼやき漫才の人生幸朗(古い!)みたいにはボクも言えない。
思うのは、若いこうした親たちは、しばらくの間こういう店には出入りしない方がいいということだ。
子供たちがもう少し大きくなって、幼稚園でも行くようになるまで我慢なのだ…と。
他人に迷惑をかけているという意識をもたないといけないなと思う。
いくら子供でも・・・なのだ。
最近、ある町で企画しているイベントでは、「子育て」をテーマに進めていたが、途中から「親育て」にテーマが変わった。
今大切なのは、よい子供を育成していくために、よい親を育てなければならないということだった。
高校球界のある有名監督さんから、選手を育てる前に、親の方に神経を使っていたという話を聞かされたこともある。
たまたま、こっそり練習を見に来た母親が、自分の息子がファールグラウンドの草取りをしていたのを見て、学校に電話してきたという。
「うちの息子は、草取りをさせるために、そちらの学校に入れたのではありません」と。
草取りは当番制で、たまたまその日が当番の日だった。こういうことから野球、いやスポーツ、いや社会は始まるのではないか・・・。
どうでもいいようで、やはり自分の経験からしてもよくなかった話だった……
野球部の草取りに文句を言う親は論外だし、ちょいと前に聞いた話、給食時の「いただきます!」の合唱に「うちの子にそんな『宗教教育』はしないでくれ!」とクレームをつけたバカ親と同じレベルの話だと思うけど、、、
SタバやMスドに子を連れてくるのはしかたないと思うな。もしそのような場所からさえも若き母親たちを閉め出すのなら、彼女たちはどこで息抜きをすればよいのだろうか?
「私は、本が読みたくてここへ来てるのよ」と咎めた白髪の小柄なおばあさんは自宅でコーヒーを淹れて本を読めばいいのだし、図書館という選択肢もある。喫茶店であれば、SタバやMスドよりはちょいと割高になるかもしれないが純喫茶や音楽喫茶などもある。ローレンスとか無言歌とかな。あ、穆然とヨークも勘定に入れといてくれ。さすがにそんなとこに子供を連れて来れば非難の対象にはなると思うが、SタバやMスド、ファミレスとかは勘弁してやってくれ。
祥稜拝
そうでしょうかねえ。
息抜きと、他人への迷惑は別だと思いますが…
>向こう岸のお花さん
もちろん別でしょうね。で???
ボクのところに届いた隠れメッセージは、Facebookのシェアで読んだという女性から。総括として掲載させていただき、もうこの話は終わりにします。
中居さんのエッセイを読んで、ただフーンと思っていただけだったのに、コメントを読んでちょっと深く考えました。
私は5歳の女の子の母親です。今はパートもしてます。つらつらとした中居さんの文章から、さりげない中居さんの思いが伝わりましたが、コメントを読むと、そんなに深いむずかしい話だったのかと考え直しました。
私の場合、ああいう状況にはやはり気を使います。MスドやファミレスとSタバはちょっと違うかもしれません。ただ、どこの店だろうと、基本的に店の中を遊び場のように勘違いしている母親たちは確かにいますね。正直いい気持ちがしません。それと、やはりいろいろな人たちがおしゃべりなどで楽しんでいるのだから、小さな子を連れた親としては考える必要があると思います。
それと、もう純喫茶や音楽喫茶なんかどこにもなくなってますよね。仕事や読書などの人も、使っているのは当然でしょう。
ところで、ローレンスは知っていますが、無言歌というのは、もう何年も前になくなったんですよね。そんなことを思うと、年輩の方にはやはりこういう店は大切なのかも知れませんね。コーヒーは家で飲みなさいというのも寂しいです。人の中にいたいという気持ちは、お年寄りには余計強いかも知れません。
やはり親としては、どこかでわきまえないと、周囲の人に迷惑をかけるのは親の責任ですから。
中居さんの言う、親たちは我慢しなさいというのも極端ですが、やはり要は、しっかり子供たちを見ていなさいということなのでしょう。
それさえできていれば、なんら問題ないことなんですからね。…………
ということで、祥稜さん、穏やかに。
向こう岸のお花さんもよろしくお願いします。
なんで、こんなこと言わなきゃならないのかな・・・
そっかぁ、、、オレにグレン・グールドを教えてくれた無言歌ってもうないんだ、、、(T-T)
あれ?「もうこの話は終わりにします。」じゃなかったのかい?
気が付かなかったが、いつのまにか、ショート・ショートって欄に続編がでてるね、、、