捨てられない通行許可証
クルマのダッシュボードに取ってあった「通行許可証」。
日付は平成19年10月3日。
その年の3月25日に起きた能登半島地震で、しばらく陸の孤島となった、門前深見に向かうためにもらったものだ。
当時、2月から始めていた地元・總持寺の歴史などを紹介する「禅の里交流館」の仕事のために、深見の奥にある桜滝の撮影に行かなければならなかった。
地震発生から3ヶ月ほどは全く仕事が止まり、再開されると、一気に進めなければならなくなった。
国道249号線から鹿磯(かいそ)、そして深見に向かう道の崖は完全に崩れ落ちていた。
深見の住民たちは、地震発生の数日後に舟で脱出している。
そのことは、深見の人たち、特に老人たちの美しい地域愛と勇気を世の中に示した。
10月、大工事が行われていた。
“崩落”という漢字と、“復興”という漢字が頭に浮かんだ。
そして何よりも、工事にあたっていた人たちの意気込みが、車窓をとおして、はっきりと伝わってくるような気がした。
この「通行許可証」は、いつまでも処分できない。
多分、ずっと身近などこかに置いていくのだと思う……