hisashinakai
星は星の数ほどある
ジャズや文学や落語やその他、日々のどうでもいいようなことを語り合ってきた今は亡き酔生虫(俳号)さんは、かつてこう言ったのだ。 「星は、星の数ほどある」と。
経緯は忘れたが、当然何らかの流れの中から星の数についての話題に移っていった時のことだったろう。
ボクもこう切り返した。 「と言うことはやはり、山は、山ほどあるんやろね」
東京からの帰りの、特急「はくたか」の中・・・・
イヤホーンから耳へと入ったキース・ジャレットとチャーリー・ヘイデンのデュオが、そのさらに奥へと静かに響いていき、生まれつきわずかに内蔵されてきた脳ミソに安らぐとはこういうものぞと教えている。
窓外の景色はすでに闇の中だが、様々な明かりが小さく刻まれた雪景色を浮かび上がらせていた。
相変わらずオレは疲れているんだと思う。そう思いながら、でも気のせいかも知れないぞと自分に言い聞かせてもいる。そうやってここまで来てしまったのだとも考えている。
人生には、世の中には考えなきゃならないことがたくさんある。 普通に言えば、山ほどあるということになる。
ボクは山が大好きだが、日本に山というものがいくつあるのかは知らない。とにかくたくさんあることになっている。
しかし、星の数ほどはないのだから少し安心しよう。
座席シートの暖房が強く、背中から眠気がやってくる。 もう少しだけ活字を追って、そのまま潔く眠ることにする……