hisashinakai
室生犀星記念館 「桃色の電車」との再会
会社で展示リニューアルの仕事をさせていただいた、室生犀星記念館を訪ねた。
出る時まで名乗らず、普通に入って一時間近くもいた。
犀星については、思い入れがある。
その分、正直言って自分の考える犀星の世界と、記念館が描く世界には大きな差があったりもする……
鏡花よりも、犀星の方が金沢そのものだと思ってきた。
初期小説の中に描かれる、素朴で美しい金沢風景の描写を知らない金沢人は不幸だ……
今日本中の人たちが向き合っている「ふるさと」への思いにも、犀星の世界は切なくもしっかりと通じている………
二階に上がり、閲覧コーナーで全集を引っ張り出し、「桃色の電車」という随筆を探した。
と言っても、随筆だったか詩だったかの記憶もなく、ただ漠然と探していたら、第2巻の中にあった。
久々の対面。二十歳の頃、激しく心を揺さぶられた出だしの文章に、青かった時代の自分を投影する。
詳細なことは書く気にもならないが、この文章を読んだ時感じたのは、詩のような随筆…みたいなことだった。
ジャズ・活字・映画・芸術・歴史・野球・ファッション…手当たり次第に向き合っていたその時代の感性が、あの「桃色の電車」という不思議な?文章との出会いに繋がったのかも知れないと思う。
このことは実に稀有。
数年前、地元文学の権威である小林輝冶先生に聞いた時も、先生は首をかしげられた。
犀星の世界で「桃色の電車」を語るのは、自分だけかもしれない?
ちょっと恐ろしいことのように響いてきた。
実に、稀有なのだ……
前にも、犀星の話でお邪魔した覚えがあります。
私には、犀星が好きになれる感覚そのものが不思議というか、
想像がつかないというか、そういったところなのですが、
何かのきっかけで、その世界へと引き込まれていくということも
ありますね。
「桃色の電車」というお話には、ちょっと好奇心が湧きました。
今度図書館で読んでみようと思います。