🖋 中平穂積さんとお会いしたこと
大学時代、紀伊國屋で本を買うと、だいたい裏のジャズ喫茶「DUG」でその本を開いていた。知的で落ち着いた雰囲気とおしゃれな感じのする素敵な店だった。
そのオーナーで、ジャズマンを撮る写真家としても著名な中平穂積さんに、2018年の11月お会いした。
写真展で金沢を訪れていた際のことだ。ずっと書いておこうと思っていたが、書きそびれていた。もう一昨年のことになっていて驚いている。
最初の夜は、私的に金沢香林坊のYORKで懐かしい話をさせていただき、2日目は、野々市市図書館のイベントスペースで開催されたトークショーを拝聴した。
ジャズマンとのさまざまなエピソード、特に素顔のセロニアス・モンクやニューポートでのコルトレーンの話など、ボク自身の中に積み上がっていたジャズの世界の知識と重なるところが多くあり、マジメ?にジャズと接していた時代が懐かしく思い出された。
今もそれなりのマジメさで聴いているが、俗に言うモダンジャズという世界はすでに遠くなってしまっている。これもジャズという音楽の特性なのだろうと思いつつ、ジャズの創造性というものに敏感でいようと思っているのでもある。
1936年生まれの中平さん。ボクにとってのDUGでのエピソードは、好きなレコードがかかったので思わず指を鳴らし、店員さんから人差し指を口に当てる仕草をされたこと。そのことを話すとにこにこと笑っておられた。
当時はみんなジャズをきちんと聴いていたし、文章とか活字とか、絵や写真などと音楽(特にジャズとクラシック)というのはとてもいい関係にあった。まあ何となくそんな気がする。
そして、ジャズ喫茶のマスターというのは、いろいろな意味で存在感の豊かな人が多かった。
「今度はDUGで待ってるよ」と言われたので、初めて入った時にかかっていたあのレコードをリクエストしてみようと思ったが、あまりにも定番過ぎてやめにすることにした。
DUGどころか、東京が遠い場所になっている今、中平さんとお会いするのは至難の業だ。もうご高齢だし、ご自愛されることを願うばかりである。