港の駅ができた


かねてより意気盛んな動きを見せていた羽咋滝町の“郷士”たちが、ついにその意志を形にしてしまった。

五月五日、子供の日。羽咋滝港を目の前にした、と言うよりも、滝港の中にといった感じで「港の駅」がオープンしたのだ。もともと毎週日曜にやっていたテント市が母体なのだが、常設の販売所を持ちたいという地元の人たちの強い意志が、立派にそのことを成し遂げてしまった。倉庫を改装した、小さいながらもそれなりにカッコいい店で、地域の手作り品などが並ぶ。近くにはこの港の駅のオープンによって派生しそうな勢いも見えている。この日は、地元の意気盛んなオトッつァん・おっかさんたちが集まり、子供のように目を輝かせていたことだろう。

ボクは翌日のもう夕方近く、旧富来町へ行っていた帰りに立ち寄った。実は前にも紹介した、このあたりの大親分・福野勝彦さんにお会いして、おめでとうございますを言いたかったのだ。しかし、福野さんは春先から金沢の病院に入院しており、オープン当日には来ていたが、すぐにまた病院の方に戻ったらしかった。入院中の福野さんとは何度かメールのやりとりをし、例の折口信夫関連のことなどを進めようとしていたのだが、五月に入ったら退院できるから、その頃にしようということになっていた。しかし、四月の終わりになって、港の駅オープンには何とか抜け出すが、入院はもう少し延びると連絡が来た。

そしてやはり、福野さんは港の駅のオープンに駆け付けていた。新聞にも福野さんが挨拶したという記事が載っている。

港の駅で迎えてくれたのは、『地域活性化団体・「創性・滝」』の理事長・折戸利弘さんだった。一度、福野さんの自宅ですれ違ったことがあるが、ほとんど初対面だった。福野さんと堅くタッグを組む、弟分のような存在なのだろうと感じた。嬉しいことに、折戸さんはボクの拙著『ゴンゲン森と・・・少年たちのものがたり』を読んでくれていた。

店では売り物になっているコーヒーを、折戸さんがわざわざ淹れてくれ、いただく。美味しいコーヒーだった。ボクだけベンチに座らせてもらい、もう閉店時間がきている雰囲気の店内で折戸さんとしばらく話した。話しているうち、脱サラして生まれ故郷に戻ったという折戸さんの言葉や表情から、この場所で、この地域の人たちと何とか楽しくやっていきたいという思いが伝わってきた。自分だけではなく、周辺の人たちにも、故郷である地域そのものにも、何らかの発信を求めている気持ちが、よく分かった。

“姫丸の一夜干し”という珍味を出している地元の東寿郎さんとも会い、しばらく話す。姫丸とは、明治からつい数年前まで大きな漁業を営んできた船の名前らしく、一夜干しは姫丸の歴代ばあちゃんたちが受け継いできた食文化とのことだ。今、こういう形の食文化が至る所で芽吹いている。差別化も大変だろうと思う。“活〆”の輪島の刀祢さんや、“こんかこんか”の金沢の池田さんなど、ボクの周辺にもいろいろな人たちが絡み合う。このような珍味と酒屋さんとかが、さらに絡めばもっと相乗的な拡がりや深みが増すのではないだろうか…と、それほど真剣ではないが、それでもそれなりに考えたりもしている。

ところで、東さんの自宅(お店)は美術館でもあり、カフェや食事処にもなっているらしい。このあたりの文化度はやはり相当高いぞ…とあらためて思ったりもし、折口信夫ゆかりの藤井家の佇まいのこともアタマを過(よ)ぎった。

話し込んでいるうちに、新しい来客があり外に出た。港の気配に夕方の匂いがしてくる。夏だったら、もっと凄いだろうなあと、夏の夕暮れ時の光景がアタマに浮かんできた。子供たちが走り回り、黒く日焼けしたオトッつァんたちがタバコをふかしながら語り合う。おっかさんたちは身体を揺すりながら笑い合っている。

福野さんが描いている生まれ故郷の町の姿はどんなんだろうか? ふと、そんなことも思ったりしたのであった………


「港の駅ができた」への2件のフィードバック

  1. 5月5日(祝)に、「滝にいるよ・・・」なんていうメールをいただいたので、
    おやおや、妙なところに行ってるなぁと思ったら、こんなトコロにいたのですね。

    この施設、翌日のH新聞にも紹介されてたので、ああこれかぁ、と納得した次第。
    あのあたりは、なにもなくて長閑なところですが、ヒトがウロウロしはじめると、
    これまでとはまた違った表情を見せてくれるんでしょうね。

    ・・・近いうちにイッてみます。

  2. 志賀町図書館で、MさんやKさんと
    仕事の話をしてきた帰りに、また寄った。
    志賀町産の、
    サバの糠漬けと三角油揚げを購入。
    折戸さんは元気だったし、一緒に店番をしていた、
    金沢生まれのおばあちゃんとも話が弾んだ。
    ただ、福野さんの姿が見えず・・・・・・

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