ひるがの高原・夏


 

ふらりと、「ひるがの高原」へ行ってきた。不覚にも初めてだった。

東海北陸自動車道を一つ手前の荘川インターで下りて、道の駅に寄り、そこから一旦何を思ったか逆コースに走り出し、途中のガソリンスタンドのやさしそうなご主人に教えられて正しい方向に戻ることができた。早朝の道の駅には、多くの人たちが採れたて野菜などを求めに来ていたが、夏の朝らしい、ボクの大好きな光景だった。

夏はやはり高原だ。海の近くの村に生まれたにも関わらず、いつの間にか平坦な海を眺めているより、起伏にあふれた山並みを見る方が好きになっていた。

高原という場所のよさを知ったのは、三十年くらい前に八ヶ岳山麓に通い始めた頃、信州の車山高原に行ったことがきっかけだった。その後立て続けに足を運ぶようになった美ヶ原高原も、雄大な景色と、広くて青い空や真っ白な入道雲を満喫するためには最高の場所で、夏になると絶対に行かねばならぬといった、妙な使命感?に後押しされていたと思う。

そんなわけで、今年は特に震災の影響を受けた節電対策もあり、暑ければ高原へ行こうというかつての思いが俄かに再燃した。日帰りで、簡単に行って来ることができる高原…。そして思い立ったのが、岐阜郡上の「ひるがの高原」だったのだ。

東海北陸自動車が開通して以来、五箇山や白川、高山などがかなり至近距離化した。それまでのことを思うと、あっという間に着いてしまうといった感じだ。さらに荘川村やひるがの高原あたりも同じ感覚で、特に白川から荘川へ抜けるまでの道(国道一五六号)は、走ること自体と風景を楽しむゆとりがないと走れなかった。

この辺りでは清見村も大好きだった。前にも何かで書いたが、オークビレッジの工房にふらりと立ち寄っては、適当に気に入ったものを買って帰ったりした。しかし、ひるがの高原まではなかなか足を延ばす気になれなかった。距離が中途半端で、日帰りをベースに考えると、どうもそれほど魅力を感じなかったのかも知れない。

 ひるがの高原の名前が、頻繁にボクの耳に入ってくるようになったのは、ひるがの高原に別荘ブーム?が起こった頃だろうか…。

もう退会したが、かつて北アルプスの薬師岳・奥黒部方面を中心に活動していた「大山町山岳会」の一員だった頃、その会の会長をされていたE山さんという豪傑から、「ひるがの高原に家(別荘)を建てっからよ、遊びに来られや!」と誘われた時だ。

E山さんといえば苦くて懐かしい思い出がある。強靭な肉体と、口の悪さが合体した、自然児そのものといった山オトコだった。ヒマラヤでの失敗もあってか、山では厳しかった。一度山スキーツアーでルートから外れ、皆を四十分ほども待たせてしまったボクは、E山さんからこっぴどく叱られたことがある。しかし、その後雪の上で肉を焼いて食っていたとき、ボクのとっていたルートに雪崩の兆候が見えていたから叱ったのだと、缶ビールを呷りながら語ってくれた。笑うと、少年のような顔になる。ボクはそんなE山さんが大好きだった。

そのE山さんが、ひるがの高原に別荘を建てるからと誘ってくれたが、ボクにはピンとこなかった。ひるがの高原の名前は当然知っていた。が、身近に感じられる場所ではなかったと思う。しかし、やはり高速道路の開通は大きい。別荘開発も当然、そのことが要因で始まったのだろうが、E山さんから話を聞いた時には、高速が出来ることなど、はるか彼方先のことだという感覚しかなかったのだ。

 荘川村から、ひるがの高原には二十分くらいで着いてしまう。あたりが何となくそれらしい雰囲気になってくると、国道沿線にクルマや人影が目に付き始める。わずかな予備知識しかない訪問者としては、とにかくどこかに寄って情報収集が必要だ。

牛乳やチーズ、アイスクリームなどを売っている店の前に、人だかりがあり、その店に入ってみることにする。ソフトクリームを買い、情報源となる簡単なマップが店の入ってすぐの場所にあったので一枚もらい出た。

マップはウォーキングコースのものだった。七キロというコースがマップ上に線描きされてある。歩きたいと思うのだが、今日は日帰りだ。クルマでも廻れそうだと判断。まず、すぐ目の前にある「分水嶺公園」という場所に行ってみることにした。

 その気になれば深く入って行けそうな道が伸びていたが、人が歩いたような気配は、もう何年も前に消えてしまったような雰囲気だ。水場に石碑があった。太平洋と日本海、長良川と庄川という意味だろう。流れが、ひるがの高原の奥にそびえる大日岳という山を源流にして、ここで分流しているのだという。

日差しを遮る木立の存在感が夏らしさを強調していた。

 クルマで源流のあたりまで行こうとして、途中で引き返した。どうも道に同化してない。ウォーキングコースであるということも、モチベーションを下げる要因になっていた。おろおろと国道に戻り、近くの「夫婦滝」に向かうことにした。国道から二百メートルとマップに書いてある。

その数字のとおり、夫婦滝にはあっけないくらい簡単にたどり着いた。もうちょっと歩きたいなあ…と、勝手なことを思ったりもする。

 しかし、滝は美しかった。高度感などは大してないが、静かにはまっている感じだ。夫婦滝の名のとおり、二本の滝が並ぶ。その間の岩場に紫陽花の花が咲いているのが見える。

 滝に着いて、岩の上を飛びながら奥へと渡った。滝つぼに最接近できる辺りまで来ると、水の美しさは格別だった。飛沫が顔にあたって、涼しい。

 せっかくひるがの高原へ来たのだから、当然高原歩きの気分を味わいたい。もともと歩くことを目的にきたのだ。そんな時、植物公園の案内を見つけ、躊躇することなく入ってみることにした。それほど広くはないが、眺望がいい。水辺の花々も美しい。短い時間だったが、太陽をいっぱいに浴びて歩いている間は幸せだった。

 そのあとも、クルマで移動してはぽつぽつと歩く。木曽馬の牧場に足を踏み入れたりしながら、ふと見上げる空が青くて、眩しくて、嬉しくなる。高原歩きはこうでなくてはならない・・・などと、大して歩いてもいないくせに一応納得している。しかし、ひるがの高原には、もう一度必ず、近いうちに来なければならないなあとも思っている。美ヶ原のような圧倒的な解放感はないが、落ち着ける何かがある。それを正しく感じ取るには、やはりしっかりと歩く準備をしてこなければならないのだ。ぶらりとやって来るだけではもったいない。

 帰り道。高速は使わず、ゆっくりと庄川に沿って国道一五六号線を走った。荘川から白川、白川では久しぶりに「AKARIYA」さんで美味いコーヒーもいただき、五箇山、福光を経て帰った・・・・・・。

翌朝は、三時半に起床。もちろん、なでしこたちの応援のためだ。疲れなど、どこにも残ってなかった・・・・・・


「ひるがの高原・夏」への2件のフィードバック

  1. 夏は、太郎平小屋で会いましょう!
    まず、北アルプスです。
    本格的に山歩きしてからですよ。

  2. もちろんです。
    今年の夏は、後半に薬師沢あたりまで
    行く予定にしとります。
    ピーカンの青空の下での、撮影山行。
    太郎小屋のテラス?で、モルツを開け、
    麗しの薬師岳を眺めながら、
    どれだけボーっと出来るかがテーマです。
    ちょっとトレーニングせんとね・・・

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