hisashinakai
じっくりと能登に浸る
二月だというのに日本海は穏やかに凪いでいた。
能登有料道路をM子Kタローの運転で、まずは志賀町へと向かっている。
助手席に乗って、ゆったりと凪いだ海が眺められるのもいいものだ。
久々の能登半島・ヒトビトめぐりだ・・・・・・。
志賀町は、いつもの図書館へ行き、これまたいつものM・Kコンビと打ち合わせ。
図書館は今一部改装中。隣の文化センター二階に仮設図書館が開設されていて、まずそこへと向かう。
事務所は三階にあり、Mさんこと森さんと、Kさんこと金井さんがいた。温かいコーヒーと小さな大福がお盆に入れられて出てきた。大福がかなり美味い。どこに売っているんですかと聞いてみると、かほくイオンと言われてちょっと拍子抜けした。
ここでは三月二十七日の再開に向けて、二階に開設するギャラリーのディスプレイなどをお手伝いする。
今までの企画展的活用ではなく、今度は常設。志賀町が生んだ“イケメン画家”南政善の作品を掲示し、その人物像も紹介するのだ。
森さんの独壇場的企画に基づいて、ボクらはそのアシストをする。
現地で概要がつかめた段階で、ひとり改装中の閲覧室へと下りた。
誰もいない本棚の間をじっくりと歩いてみた。とてつもなく多いというほどではないが、それでもこれだけの本が周囲にあると、ちょっとした興奮に陥る。
気になる本があると、すぐに手に取ってみる。先が長そうだから、じっくりと読んだりはしないが、パラパラとめくっては次の本へと手を伸ばす。
途中でそんな読み方にも疲れてきて、最後は挫折。だが、贅沢なひとときだった。
昨年製作した、志賀・富来出身の文学者や芸術家たちのタペストリーも、今春から掲示していく。これはなかなかいいものだ。いい企画だったと自画自賛。
昼飯は、近くの温泉施設の食堂で手作り定食をと出かけたが、メニューを見て急遽変更。ボクにとっては昨夜と同じメニューだったからだ。M子Kタローはそれでもいいと言ったが、却下。そこからすぐの中華の店へと移動した。
ボクがチャーハン大と言ったのに、身の程知らずのM子Kタローはカニチャーハン大などをオーダーする。さっきの腹いせだろうか。それなりに美味かったが、店の中が寒いのにはちょっと困った。
再び能登有料に戻って、輪島へと向かう。羽咋あたりではほとんどなくなっていた雪だが、さすがに穴水から輪島にかけての山沿いでは多い。
輪島では漆器販売の「しおやす」さんへと顔出し。
しおやすさんも、春の完全オープンに向けて改装工事が始まった。部分的に営業しながら店のイメージを変えていく。
最初に提案させていただいてから五年がかりだろうか、ようやく一歩踏み出した感じだ。
ボクとしては、単に店を直すということ以上に、しっかりと見つめていきたいこともあり、これから夏場にかけての“店の顔づくり”みたいな方向を模索している。
輪島塗のことは、いろいろと勉強させてもらった。ボクなんぞ及びもつかないむずかしい問題もあるみたいだが、輪島には前向きなヒトビトもたくさんいて、それなりに面白そうだ。
店や作品(商品)についても、それぞれのスタンスで個性化が進めばいいのではと思う。
カニチャーハンが合わなかったのか、M子Kタローがしおやすさんのトイレに入ったきり出てこない。
スッキリした顔でようやく出て来ると、すぐに国道249号線を山越えする。門前黒島の角海家へと向かうのだ。
空は薄曇り。広々とした田園地帯が真っ白な世界に変わっていて目を奪われる。
道下(とうげ)あたりから目に入ってくる海も、見事に穏やかだった。
角海家の前で、保存会のK端会長と今年初めてお会いした。取材の打ち合わせ中みたいだった。
中に入ると、YさんとKさんがお留守番中で、Yさんが広間にお雛さんが飾ってあるよと言う。
さっそく上がらせてもらい、拝見。昭和初期に作られたという、まだ不完全な雛人形たちだったが、それでも十分な貫禄を示している。
実は角海家には江戸時代に作られたものがあったらしいのだが、今は東京にあるとのこと。惜しいねえとYさんも話していたが、こんどの三月三日には、何か雛祭りらしい行事をやりたいと意気込んでいた。
Yさんがコーヒーを淹れてくれて、海の見える部屋の炬燵を囲み、しばらく「ふるさと談義」に暮れる。
昔の風習や、子供の頃の思い出話などを二人が語ってくれた。こういう時間を共有できるのがいい。
イベントをやろうという話も、少し具体性を帯びてきて、二人の表情も明るい。
まだ暗くならないうちにと、角海家を出たのが四時過ぎ。海は相変わらず見事なくらいに静かで、深見という入り江の地区に回り込む岬も、くっきりと浮かんで見えていた。
旧門前町剱地から、仁岸川に沿って山道に入る。いつもの富来へと抜ける道。
雪は道にまだ残っているだろうが、せっかくだからと行ってみる。
運転手のM子Kタローが、山の深さに驚いたりビビったりしながらクルマを進める。アイツも能登の山里の魅力が少しは分かったことだろう。
羽咋・滝のロードパークに寄って、久しぶりに夕陽がきれいな田園風景を見た。葦が逆光に映えている。
Nikonを持ってこなかったのを後悔しながら、CONTAXで撮影。先着の若い女の子もひとり、小さなデジカメを構えていた。
汐風の市場・滝みなとにO戸さんを訪ねる。
時間は五時過ぎ。マスクを付けていたせいか、入ったすぐには気が付いてもらえなかった。
柿木畠ヒッコリーのM野さんが、先日わざわざ自宅まで届けてくれた油揚げがあったので、豆腐と薄あげと一緒に購入。
志賀町の豆腐屋さんが一旦店じまいしたということだったのだが、体調を壊していただけで再開したとのことだった。その話を聞いたM野さんが、わざわざすぐに買いに来たというのだ。そして、我が家にもおすそ分けしてくれたのだ。
M野さんも相変わらず、凄いリアクションだと嬉しくなった。
O戸さんから面白い話を聞いた。それは何と海水が売れているということだった。滅菌した滝の海水が、いろいろな用途に使われ始めたらしいのだ。
少しだけ飲ませてもらった。子供の頃、ゴンゲン森の海で思わず飲んでしまった、あの時のような濃い塩の味がした。風邪の予防にもなりそうだった。
そして、その水を利用したカレイの日干しも買った。手触りがソフトで新鮮な感じのする日干しだった。(タイトル写真)
今流行の「塩糀」も売れているらしい。海藻なども滅菌海水を使って新鮮な味で提供できるとのこと。それと前にも紹介したナマコもたくさんあった。
O戸さんも相変わらず元気で頼もしい。ズシリとした大人の雰囲気と、少年のような探究心が同居していて、ついつい話に引き込まれていく。
何よりも、地場スタンスであるところがボクは好きだ。
夏にはこの港周辺で何かイベントらしきことをやりたいと、以前から話し合ってきた。何とかサポートしたいと思う。
もうすっかり夕暮れだった。湾の中の水面はまったく波を立てていない。
こんな静かな海も久しぶりやわ…とO戸さんも言っていた。
長いようで短いようで、短いようで長いような・・・そんな一日が終わろうとしていた。
明日は早朝の電車で東京だ…。だが、とりあえず今夜は、今日のいろいろな出会いの余韻にひたることだけ考えよう…ということで、O戸さんにも「頑張ってください!」と声をかけて去った。
みんな、頑張ってるんだなあ……
タイトルどおり、久々のナカイ節って感じですね。
楽しそうに助手席に座っている姿を想像しましたよ。
ナカイさんのまわりには、
いいヒトビトがいっぱいいるんですね。
今更ながら微笑ましい。
暖かくなったら、角海家も行きたいし、
滝の方にもぜひ行ってみたいです…
今朝はまた雪だけど、
おだやかな能登の海と、
ヒトビトめぐりの中居さんの姿が
思い浮かびます。
いろいろと、仕事なのかプライベートなのか
よく分からないけど、楽しそうですね」。
体調も戻ったみたいですし、
またほどほどに頑張ってください。
能登の話は、まだまだ本音ではないです。
いつか本音で能登を語りたいですが、
その時はかなり勇気が要りそうです。
それに、そんなに立派ぶっていても
息苦しいだけだし、行き当たりばったり的な
対応で今はやり過ごします。
ただ、ボクは能登が好きなんですよ。
瓜生でネット検索してたら、こちらに辿り着きました。
興味深い記事が多く、しばし立ち停まってしまいました。
私は輪島出身です。
「本音」での語り楽しみにしてます。