平泉寺に白山を見る


何年ぶりだろうかと考えつつ、旧白峰村の谷峠(トンネル)を越え福井県勝山市へと向かっていた。隣りの大野へ行ったのが一昨年で、その時も長いこと勝山へは言ってないと思っていた。

ボクの場合、勝山へ何度も行っていたというのは、すべてが平泉寺へ行くためだ。そういう意味では、かなり平泉寺が好きだったと言っていい。きっかけは、ボクの定番、司馬遼太郎の『街道をゆく』だった。

この歴史紀行によって、どれほど多くの土地を訪ねたり、多くの土地に思いを馳せたりしただろうと考えると、今は亡き司馬遼太郎大先生には深く感謝をしなければならない。

平泉寺までの道路は基本的に何も変わっていなかった。非常に分かりやすく、簡単に辿り着ける。

たぶん二度目の時からだろうか、下にクルマを置き、菩提林と呼ばれる見事な大木の参道を歩くようになった。だが、時間のかかる長い道であったこともあり、そのうち石段直下の駐車場までクルマで上がるようになる。もともとそれほど多くの人が訪れていたわけでもないが、今でも参道を歩く人が二、三人ほどいて、その人たちの姿を見た時は、ちょっと気後れがした。

もう有名なのだろうが、平泉寺の歴史は古い。717年(養老元)、泰澄(たいちょう)によって開かれている。泰澄と言えば、白山を開いた人であり、石川県でもたくさんの伝説や像を目にする。

その泰澄が夢の中でお告げを受け、白山へ向かう途中にやって来たと言われる池が境内に残っているが、その雰囲気がとても神秘的でいい。今でも、その池に向かって深くお祈りをする人たちの姿を見ることができる。

 

平泉寺は正式には平泉寺白山神社というくらいで、石段の途中に鳥居がある。そこがちょうど、仏の世界と神の世界の境界であるらしく、その場所で一度足を止めるのが正しい参拝の仕方なのだそうだ。

今は観光ボランティアの人たちも大勢いて、そういった話を丁寧に聞かせてくれている。相変わらず杉木立と苔が見事で、木漏れ日が差し込んでくるあたりは、その濃淡が美しい。

閉めきられた拝殿の裏をさらに上ると、三つの宮が並んでいる。白山連峰の三つの峰になぞらえてあるらしい。と言うと、大汝と御前峰、そして別山か。かなり傷んだ感じはするが、彫刻などは素晴らしい。

楠木正成の墓に続く長い石段の道なども、平泉寺の魅力を伝える場所だ。石段を上り切ったところの社の裏に白山への禅定道が伸びている。

白山の禅定道は、石川県では一里野の奥にあり、あとは岐阜県側にもあるとのことだ。

なぜか、かつてはただ漠然と歩いてきた場所に、今はとても深い思い入れみたいなものを感じる。その不思議な思いをアタマの片隅に置きながら、苔庭にゆっくりと目を遣ったりする。

老若男女が、それぞれの体力に合わせながら歩いている。娘と母親、孫娘と祖母、そんな組み合わせをなぜだか多く目にする。

「私はここまででいいから、アンタ行っておいでや」そんな会話が耳に届く。

先に書いた御手洗池に下ると、若い家族とその父親の母だろうか、後から追うようにしてやって来た。母親が息子の家族にこの池から龍が出てくるという内容の話を始め、息子夫婦が石段をさらに下りて、丁寧にお祈りを始めた。

言葉から地元福井の人であろうと推察し、彼らが去った後、じっくりと合掌した。

平泉寺は今、大規模な発掘調査を進めている。これらが日の目を見るようになれば、さらに一層この一帯はとんでもない歴史的遺産になる。すでに発掘の見学もできるようになっていて、先が楽しみだ。前日に開館した「白山平泉寺歴史探遊館まほろば」の展示の仕事にも少しだけ関わり、この地への愛着も倍増した。

かつて、某シンクタンクに片足の膝ぐらいまでだが入っていた頃、富山には立山博物館があるのに、石川には白山博物館がないことについて提言したことがある。石川県の人たちと、富山県の人たちでは山に対する思い入れが全く違う。富山の人たちは、山としっかりと付き合っている。そう思っていた。提言し、たしかにそこから何かが生まれたが、白山に関しては福井県側の方が深いのかも知れないと思った。

平泉寺に行くようになってから、そのことを強く感じていたのだ。

今はもう世界遺産登録への夢も、そう遠くないような気がする。ただ、我がままを言わせてもらえば、あまり大きな存在にはなってほしくない。

入り口の茶店で買ったあんこの入った餅を、「まほろば」の外のテーブルで食べた。勝山市役所の横の店で、ソースかつ丼とやまかけそばも食べた。

それなりに美味であった……


「平泉寺に白山を見る」への1件のフィードバック

  1. 私も何度か行ってますが、
    最近はご無沙汰してます。
    素敵な場所ですよね。
    あらためて行ってみたくなりました。

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