100メートルもないその先に、それがあった。
それを発見した時、思わずドキッとした。
北三陸的に言えば、ジェジェッである。
すぐ目の前にコンテナがあり、それを撮影していた時だ。
半信半疑のまま歩きだし、右斜め後方に目をやりつつ、
ゆっくりとクルマに戻る。
何のためか、敢えて落ち着いているのだというふりをしている。
窓越しに、もう一度それを確認。エンジンをかけた。
少し登った。そして、それの30メートルほど手前で、またクルマを下りる。
山間はもう日が陰っている。空気も涼しい。
そこは北陸のK市中心部からクルマで約30分。
推測だが、馬だとゆっくりで2時間くらいか。
牛だと半日はかかるかも知れない。
これでこの場所は知られてしまうだろう。
しかし、それでもかまわない。
歩いて、すぐ目の前まで来た。
塗装の剥がれていない部分はまだ美しくも見える。
正面のライトは片方だけだが、しっかりと残っている。
ひょっとして遊園地などで使われていたのだろうかと想像する。
とにかく、この不思議なモノが、この場所にあるということに心が揺れている。
いつ、どうやって、なにゆえにこの場所に運ばれて来たのか?
かつて、ここには鉄道が走っていたのだろうか?
ひょっとして、旧盆の深夜、突然汽笛が遠くから鳴り響くと、
霧の中、草を分けるように線路が浮かび上がってくるのかも知れない。
そして、この不思議なモノが、
生気を再び得たかのように、ゆっくりと動き出すのかも知れない。
子供たちは、その後を追い、見えなくなるまで力いっぱい手を振る。
そして、この不思議なモノが落としていった、
おもちゃや菓子などをみんなで拾い合うのだ……
振り返ると、近くの農家の人だろうか、こっちを胡散臭そうに見ていた……