hisashinakai
白虎隊の墓前に立って
白虎隊の墓の前には、いつも人がいます。
と、地元の人らしい誰かの声が聞こえた。
一見、観光地としてしか見えない飯盛山。
わずか、140年ほど前か…と、
頭の中で、何度も呟いている自分がいる。
十代半ば過ぎの少年たちが、図らずも、
美しい日本人の心情を示すことになり、
美しい日本人の象徴のひとつとなってしまった。
この出来事を知らない日本人は少ないだろう。
ただ、悔しいのは、彼らがあまりにも若過ぎて、
奪われたものは、誇りなどだけでなく、
“未来”だったということだ。
普通に考えれば、残されていた人生の方が、
ずっと長かったということだ。
彼らが自決した場所からの会津城は、
予想していたよりも、はるかに小さく見えた。
そのことがまた胸を打ち、彼らの決意を想像させる。
その城や城下の惨状から彼らは自国の敗北を悟り、
生き恥をさらしてはいけないという教えを守って、
自ら命を絶つことを決意した。
わずか、140年ほど前の出来事なのに、
はるかずっと昔のことのように思えるのは、
日本がその直後から急激に変貌していくからだろう。
しかし、墓の前に立ち、
目を閉じて深々と手を合わせる人たちを見ていると、
日本人はやはり何も変わっていないのではないだろうか、
と、思ってしまう。
やはり、会津は不思議な国だ……