雨の日の草刈り


細かな雨の降る中、家のまわりの草刈り。

山用のややごついTシャツ。

作業用にしている、これもまたごついパンツ。

これらは細かい粒子のような雨くらいなら負けない。

それに気温も高いから、ちょっと濡れるぐらいがちょうどいい。

ポケットから聞えてくるのは、スマホが発する「Basie in London」。

これはポケットから聞えてくるというのがいい。

イヤホーンではいけない。

ズボンの後ろポケットから、いかにもアナログ的、モノラル的に聞こえてくるのがいいのだ。

だから、流すのもカウント・ベイシー・オーケストラなのでもある。

ただ単に、尻(ケツとも言う)の感触もいいだけではなく、なぜかベイシーサウンドに押されて、作業もはかどっているような感覚にもなったりする。

それにしても、久しぶりに雨に濡れるという感覚を味わった。

これは驚異的な久しぶり度合いだと思い、ニンゲンらしく生きていない近年の日々のことを思ったりしながら草を刈った。

60年に及ぶ人生で、最も激しく雨に濡れたというのは、あの「剣岳・梅雨ド真ん中豪雨逆上山行」(このタイトルは今考えた)の時だろうと振り返ったりもしている。

初めての本格山行だったが、若き日の「憧れと試練」が入り混じった思い出だ。

番場島から当時の伝蔵小屋までの登りで、パンツの中までずぶ濡れになった。

まさにカラダの芯が冷えてしまうくらいのずぶ濡れ度だった。

これには深い事情があって、同行者たちよりもはるかに体力的優位さを持っていた自分が、その時のリーダーから日本酒の入ったポリタンを担がされ、自分自身の荷物は他のメンバーに分配されていたのだ。

つまり、自分の雨具を携帯していなかった。ついでに書くと、ポリタンはキスリングの大きなリュックに入れられ、パイプの背負子で背負っていた。

この大量の日本酒は、その夜少しだけ減ったが、翌日は剣の登り下りで誰も口にしようなどとは言わなくなり、結局下山するまでほとんどが残っていた。

そんなことを思い出しながら作業していると、最初は適当なところでやめにしておこうと考えていた思いが徐々に薄れていき、じっくり腰を据えてやっていくスタンスに変わっていく。

そのことに気が付くと、これもまた雨の中をひたすら黙々と歩いていた山行と同じだなと思ったりする。

雨で草が重くなっていた。

最後にかき集めながら一ヶ所に寄せていく作業は、なかなかチカラが要る。

ポケットからのベイシーは、ボーカルが加わってますます元気がよくなっている感じだ。

そういえば、ベイシー・オーケストラは二度コンサートに行ったなあと思い出す。

今年の金沢のジャズイベントに、またチック・コリアが来るらしいことも思い出し、今年はトリオだから行ってみるかなと考えていることも思い出した。

この間、何かの拍子にチックのソロピアノが耳に飛び込んできて、そのタイミングの良さもあってか、チックのピアノにまた興味を持ち始めている。

「CIRCLE」なんかも、なぜか最近たまに聴き直している。

こういうことは良い傾向だなと思っているうちに、雨が激しさを増してきた。

そろそろフィニッシュに向けて仕上げなければならない。

最後はやや雑になったが、なんとか終わった。

顔や腕なんかの濡れ具合もいい感じになってきていた。

それにしても、隣の空き地は草ボウボウなのである………

 


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