🖋 秋は山里歩きなのであった


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自分の住んでいる内灘という町と、河北潟干拓地でつながっている津幡という町は、石川県河北郡に残った二つの同朋みたいな町である…と、勝手に思っている。

残ったというのは、かつての河北郡にはさらに三つの町があったのだが、その三つの町は徒党を組んで?「かほく市」という新しいグループを作り、我々から離れていったからだ。

当然残ったのには妥当な理由があり、何といっても内灘と津幡は他の三つの町よりも財政的に余裕があり、ステータスも高かったからだ…と、勝手に思ってもいる。

しかし、内灘と津幡には大きな違いがある。

それは、内灘が日本海の海岸線に沿って伸びる砂丘台地上の小さな町であるのに対し、津幡は富山県や他の市町との境をもつスケールの大きな町であるという点だ。

だから、ボクにとって津幡は果てしなく冒険心を煽る町である。

山里が深く続いていて、その風景の大らかさにいつも癒されてきた。

きっかけとなったのは、瓜生(うりゅう)という地区を訪れたことだった。

輪島市門前にある總持寺ゆかりの、峨山という名僧の生まれたところが瓜生であり、門前で建設された「櫛比の庄・禅の里交流館」という資料館の展示計画をやっていた時、瓜生まで石碑の撮影に出かけた。

予想をはるかに越える深い山里に入っていき、最後はこの先クルマは入れないといった感じのところまで行った。

田んぼや畑には人影はあったが、たまに見る家屋の周辺では全く人を見ることはなかった。

初めてが仕事絡みだったせいか、その後にゆっくりと山里の空気感に浸りたくて休日にも出かけるようになる。

そして、津幡の山里の不思議な魅力に少しずつ惹かれていったのだ。

廃校になった小学校校舎や、その向かいの高台に上って眺める風景なども気に入った。

ゆるやかな起伏が続く水田と畑が広がった丘陵地なども、大好きな眺めになった。

そして、いつの間にか、そんな風景の中を歩いてみたいという思いが生まれてきた。

前置きが長くなったが、今回のKという地区の周辺も、そんな中で好きになった場所だ。

このあたりは、午後から出かけ、太陽が西に傾いていくのに合わせながら、風景の変化を楽しむのに適している。

人の生活感が漂う山村よりも、自然だけの山里の方が歩くのには気軽でいいと思っていたのだが、いつの間にか、そんなことに気を使わなくなっている。

もともとの好きな風景にはいつも人家の存在があったようにも思う。

ただ、遠望として見る方に傾倒していたに過ぎない。

ところで、最近は水田や畑の中の道でもほとんどが舗装されていて、土の上を石や草を踏みながら歩くことが少ない。

軽トラが走れるように、そして機械が入れるようにと道は固められている。

しかし、そんな舗装の道もひび割れなどが激しくなると、それがまた自然の中の風景のように見えてくるからおもしろい。

今回歩いた道は、緩い登りをゆっくり三十分も行けばキャンプ場に出る。

夏にはにぎわうのかも知れないが、11月の初めともなればまったく人の気配はなく、池に冬鳥たちが浮かんでいるくらいしか生き物の存在を感じない。

そんな雰囲気の中、あちこちに目を向けながら歩いている自分の姿を第三者の感覚で想像すると、妙に落ち着けなくなったりもする。

いつもの、自分がなぜここにいるのかを説明しなければならない的症候群に襲われたりもする。

ここでもしクマに襲われたりしても、自分が悪いだけで、山でよく考えていたクマの目を指で刺し、その隙に逃げるといった意味不明な作戦までも考えている。

しかし、あたりは静まり返ったままで、そのうちススキの穂先に差し込む陽光にぬくもりを感じたりして、ほのぼのとしてくるのだ。

登りの道に架かった水道橋や、道から見下ろしたところにある小さな池とそのほとりに建つ小屋、そして、そこから視線をわずかに上げたところに見える枯れ木たち。

楽しませてくれるものはいっぱいある。

西日の角度が徐々に強くなるにつれ、山里の家並みがより浮かび上がってきた。

影が濃くなり、畑の畝ひとつひとつも鮮明になっていく。

とにかく説明のつかない何かに惹かれながら、なぜかこうした道を歩いている。

そして、不思議だが、とてつもなく満たされている………

瓜生(うりゅう)までの道

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