「 JAZZ AT 紺屋坂 (2) ちょい柔らかい話編 」


 

 「JAZZ AT 紺屋坂vol.2」の初日。

 ボクはそれとはまったく関係ない用事で朝の四時半に起き、五時過ぎにはクルマを走らせていた。行き先は新潟。前日は金沢で用事があり、どうしても出発を当日の朝にした。余計な疲労がたまることは分かっていたが仕方なかった。

 そう言えば、前夜のメールのやり取りで、体調を悪くしているYに大事にしろとメッセージを送っておいた。他人のこと言えた状況ではないくせに。

 とまあ、そんなことで一日は始まったが、新潟に一時間半ほどいて、すぐにトンボ帰りした。金沢に戻ったのが二時半頃。会社にクルマを置き、会場の紺屋坂まで歩く間に、「金沢ジャズストリート」の街なかライブをちらっと聴いたが、ゆっくりもしていられず、慌ただしい中、会場入りした。昼飯は結局食えず。朝もコンビニの乾いた菓子パン二個だけで、情けなさは果てしなかった。

 四時から初日の本番。出るのはまず、兼六中学校吹奏楽部に県立工業高校吹奏楽部という二回目を迎えた「JAZZ AT 紺屋坂」の、ある意味での目玉だ。ジャズとしての演奏内容は期待していないが、とにかく一回出てもらって、さらに来年も出てもらい、ジャズに目覚めてもらおうという魂胆。両学校側からも“出たい”という強い意欲が感じられ、参加となった。  

 新聞にもこのニュースは大きく取り上げてもらった。前日の取材で自分としては少々言ってることに違和感を持ったりしたが、こうなったら、とことん行こうと決めたのだった。詳しいことは、「JAZZ AT 紺屋坂1 やや固い話編」に書いた。

 その次が、一回目に引き続いてのデキシー・ユニオン・ジャズ・バンドだ。何の心配も要らない完熟オトッつァんバンド。ひたすら“お好きにどうぞ”と告げておいた。初日のトリは、これもまた一回目に引き続いての登場となるアイユール。直接のライブとしては久々だが、こちらも心配無用で、むしろ久々だから楽しみでもあった。

 今回は音響も照明も昨年より質を高め、司会も金沢大学放送研究会に打診。是非やらせてくださいとの要望に応えた。未来のアナウンサーたちの鍛錬の場的匂いをチラつかせ、その初々しさで盛り上げてもらおうとしたのだが、やはり仕込み不足で物足りなかった。次回への課題のひとつだ。

 初日の本番── 兼六中学校は、演奏曲が全くもって完璧にジャズではないという点で、いくら綺麗事を並べても、企画人として、今ひとつ気恥ずかしいものがあった。思わず赤面してしまった、というほどではなかったにしろ、それに近いものがあり、ボクは白クマのようにひたすら会場を右往左往していた。もちろん、これからジャズに目覚めてくれればいいのだが、運動会で演奏するマーチや、トトロの何とかではなあ…… いや、しかし、校長先生はじめ、ご父兄の方々の熱い声援もあって、よいステージであったのは言うまでもない。後日、顧問の先生を訪ねると「来年は必ずジャズの曲をやります」と言ってくれたので、期待していよう。

 二番手の県立工業高校も、総体的には兼六中に似たものがあったが、そこはやはり高校生。より自由な、音楽を楽しむ雰囲気が感じられた。特にラストには、定番中の定番、映画『スイングガールズ』スタイルの『シング・シング・シング』を演ってくれたが、ドラムの女の子(ほとんどメンバーは女子)が元気よくて、聴く側も盛り上がった。ライブ自体の雰囲気も十分理解できただろうから、こちらも来年に期待しよう。

 中高校生たちの出演でよかったのは、聴き手を増やしてくれることだ。本番前にイス席がほぼ満杯状態になるというのは、非常にいいことだ。やはり、スタートはこうでなくてはいけない。しかも、そのまま残ってくれる人も多くいて、なかなかの企画効果であった。

 デキシー・ユニオン・ジャズ・バンドの演奏が始まる頃には、日も暮れ始め、いい雰囲気になってきた。相変わらず息の合ったデキシーランドジャズを聴かせてくれるメンバーの皆さんには、ただただ感嘆するばかり。演奏の上手さはもちろんだが、おしゃべりにも、すべてのパフォーマンスにも、ショーマンシップが満ち満ちている。二日目のパフォーマンスでも聴き手を十分に楽しませてくれた。企画人としては、さまざまな可能性を見出せるバンドで、いろいろと企画の中に充て込んでいきたい存在だ。

 そして、アイユールだ。彼らは、聴くたびに上手くなっているような感じを受ける。リーダーのIさんのギターは言うまでもなく、ボーカルのYさんの歌声は絶対的に個性を増した。Yさん流の、ひとつの世界を作りつつあると感じた。そして、テナーサックス、ベースと絡めた四人編成による演奏スタイルは、かなり完成度を高めているとボクは思ったのだ。

 紺屋坂のジャズライブを象徴する演奏スタイルは、アイユールにあるのかも知れないなあと、ボクは思った。ボクの横で聴いていた商店街関係者の方も、「ナカイさん、いいグループ探してきてくれましたね」と言ってくれた。

 夜になって、「JAZZ AT 紺屋坂」はその魅力を発揮し始めた。会場である「ホテル兼六城下町」の建物、その奥に見える兼六園の森と古い木造建築、ほぼまん丸に近い美形の月も浮かんで、アイユールのアコースティックサウンドと、Yさんのシンプルな歌声がライブに活き活きとした空気を注ぎ込んでいく。何かが見えてきた感じがした…… アイユールも二日目に再登場してくれ、そこでも見事な演奏を聴かせてくれた。

 二日目にはさらに、金沢工大軽音楽部のMAJOというモダンジャズのコンボが参加してくれ、トップを務めてくれた。エレクトリック・ピアノのケーブルか何かを忘れて取りに戻るというハプニングはあったが、何とか本番に間に合った。演奏ははっきり言って発展途上。しかし、意欲がありそうで、チック・コリアのむずかしい曲『スペイン』にチャレンジするなど期待が持てた。来年も声をかけようと思う。

 そして、金沢ラテン・ジャズ・オーケストラ。芸術村で活動している新しいバンドだ。ほとんど練習だけの活動のようだったが、演奏内容はレベルが高く、練習そのものをベースにしている分、技術的にも優れたものがあると感じた。リーダーのアルトサックスやトランペットのソロが印象に残っている。ある意味、デキシー・ユニオンに近いパフォーマンス性も感じられ、これからの付き合いが楽しみになってきた。

 二日間をとおして、天候に恵まれた。特に二日目には雨の心配があり、少しでも雨が落ちてきたら、即中止と決めていたが、ほとんどその心配は無用に終わった。誰が晴らしてくれたんだろう…… とにかく感謝しよう。

 ボクは相変わらず忙しくしていて、打ち上げにも出られなかったが、商店街の人たちは多分満足してくれたと思う。課題も多く見つけられたし、それに向けてボクの仕事も明確になった。ジャズによって人の心が繋がっていくようなイベントになれば凄い、と思う。紺屋坂界隈のヒトビトと、そこに集まるヒトビトに、そのことを伝えていきたい。

 「JAZZ AT 紺屋坂」は、兼六園の紅葉シーズンに合わせてもう一回やる。アイユールに出てもらう。

 その頃には風も冷たくなっているだろうけど、心の少しの部分くらいは温められるだろうと思っている…


「「 JAZZ AT 紺屋坂 (2) ちょい柔らかい話編 」」への1件のフィードバック

  1. 久しぶりにブログ読ませてもらいました。
    夏の話から文学や音楽の話になって、
    今朝は冷え込んでもいるから、秋だなあと思ってしまいました。
    朝のコーヒーも、よりおいしくなったような。
    紺屋坂のライブも、なんだか、らしくなってきた感じですね。
    頑張りすぎないように、適度にやってくださいよ。

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